WORKS SHISEIDO US/ホリデーコレクション

2020.12.22


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今まさにアメリカやカナダ、メキシコなどの北中南米のデパートや化粧品専門店、ネットストアで販売しているSHISEIDOのホリデーコレクションのボックスをデザインしました。

化粧品業界にとって、ホリデーシーズンは1年で一番売上が見込める時期なので、どのブランドもキャンペーンに全力を注ぎます。ギフトボックスのデザイン一つが売上に及ぼす影響は計り知れません。また、どのブランドも一斉にホリデーキャンペーンをスタートさせるので、デパートでいかにコンペティターと違いが作れるか、消費者の心を揺さぶることができるか、美しくかつユニークで強いデザインが求められます。そこにブランドらしさも必要になります。

アメリカではサンクスギビングが終わり12月になると、街中がホリデームード一色になります。また、いわゆるクリスマスプレゼントを友人や恋人だけでなく、家族や親戚などたくさんの人に渡す習慣があります。アメリカのホリデーは日本でいうお正月に近く、家族や親戚などとても親しい人たちと一緒に過ごすのが一般的です。その時のギフトとして化粧品は人気のあるカテゴリで、ホリデーコレクションの箱を大量に抱え込む人の姿を見かけることもあります。

ここ最近、日本で見かけるクリスマスコフレという表現はアメリカでは少なくなってきており、ホリデーコレクションと呼ばれることがほとんどです。アメリカはキリスト教だけでなくユダヤ教やイスラム教など多様な宗教が混在する国なので、ポリティカルコレクトネスの観点から、近年ではクリスマスという表現は控え、代わりにホリデーという言葉を使うことが多くなってきているようです。

また、 クリスマスという表現を控えるというのは、言葉だけではなくクリスマスを連想させるものを全般的に控えるということでもあります。 たとえば、赤と緑のカラーリング、もみの木、サンタクロースやトナカイなどです。明確な定義があるわけではありませんが、SHISEIDOのようなマスマーケットをターゲットとするブランドは、そういったクリスマスならではの表現をなるべく控える傾向にあると思います。

とはいえ、クリスマスを楽しみにしている方々も多くいます。NYではロックフェラーセンターの巨大クリスマスツリーや5番街のイルミネーションで盛り上がり、Macy’sなどデパートのショーウィンドーにはサンタクロースやトナカイがデコレーションされたりもしますので、ブランドはどこまで多様性に対応するか、正解もないので難しい課題だと感じています。

ちなみに、僕は社内で三角形をモチーフにしたホリデーのデザインしたことがあるのですが、チームのマーケッターにこの三角形はクリスマスツリーに見えると指摘をもらった経験があります。 自分にとってはただの三角形でも人によってはそれがクリスマスツリーに見える場合があるので避けたほうがいいとのことでした。難しいところですが、興味深い視点で勉強になりました。

話がだんだんそれてしまいそうですが、もうひとつ。日本では見たことのなかった黒人のサンタクロース人形をNYではじめて見つけました。クリスマスの中にも多様性があって、さすがダイバーシティの街だなと感じました。アジア人のサンタクロース人形はまだ見たことがまだありませんが、そのうち見かけるようになるかもしれませんね。


1920年頃、約100年前に化粧品の包装紙に使われていた唐草パターン。

1920年頃、約100年前に化粧品の包装紙に使われていた唐草パターン。


2020年のホリデーボックス

2020年のホリデーボックス

さて、SHISEIDOは日本のブランドなので、”モダン・ジャパニーズネス”がクリエイティブのテーマの根底にあります。

今年はSHISEIDOが昔からデザインモチーフとして使っている唐草をモダンにリファインしました。そのままだとクラシックな印象だったので、パターンを少しずつ変形させたり、印刷の表面加工などを工夫して、日本らしさ、SHISEIDOらしさを感じさせながらも、モダンで華やかなホリデーを演出しています。

アメリカのマーケットでどのくらい受け入れられるのか楽しみです。

Information

MdNデザイナーズファイル2021の装丁デザインをしました。

発売日 :2021-02-24
仕 様 :A4判/272P
ISBN :978-4-295-20099-4
価 格 :本体 3800円(税別)
出版社 :エムディエヌコーポレーション
販 売 :Amazon 楽天ブックス ヨドバシ.com

詳細はMdN BOOKSをご覧ください。