今年の秋、DESIGN TOUCHが2年ぶりに開催されることが先日発表されました。そこで今回は、2018年の事例ですが僕が担当したメインビジュアルについて、考え方とアプローチをシェアしたいと思います。
DESIGN TOUCHは毎年200万人近くが訪れる日本で最大規模のアートフェスティバルの一つです。アートが好きな層をはじめ、会社員から学生まで実に多種多様な人たちの興味を喚起するにはどうしたらいいのか、ということが課題でした。
2018年のテーマは「IDEA OF THE FUTURE」で、作品の出展者はマツダやNTTなどの大企業や国内外のデザイナー、アーティストたち。彼らは広義の意味で“未来”をテーマにそれぞれの作品を制作し発表しました。そして、その未来に向けた自身のアイデアがYESなのかまたはNOなのかを訪れた人たちに問いかけました。
人によって正解が違う時代なので、ある人にとってはいいアイデアだと感じる人もいれば、そうでないケースもあると思います。明確な答えを一方的に提示する場ではなく、様々な視点や多様な切り口の作品に触れ、未来について考えるきっかけを与えるという趣旨のイベントで、まさにデザインにタッチする(触れる)という素晴らしい企画です。
僕はこの“観客に、未来の可能性についてYESかNOを問う”ということに着目して、コイントスのビジュアルを考案しました。なぜならコイントスは二つのことを選択する時に使うアクションだからです。
掲出時の様子を想像しながらデザインしていったのですが、ビジュアルに連続性を持たせることで一連のコイントスの流れが浮かび上がるように描いています。未来に向かっていく軌跡を可視化することで、期待感を高める効果も狙っています。また、4枚目のポスターは最後にコインが地面に着地してクルクルと回っている瞬間を描いているのですが、表が出るか裏が出るのかは会場で作品に触れて、あなたが感じてほしいという意味を込めています。
例年、東京では秋にアートイベントが集中して開催されます。つまり、ライバルが多い状況です。このイベントをPRしていく上で、アート関連情報をまとめたWEBサイトやDMやチラシなどで、他イベントと横並びになることも多いだろうと考えました。そこで、意図的に鮮やかでコントラストの強い配色でシャープに描くことにより、見た人の目を引くようなビジュアルに。
また、東京ミッドタウンではフラッグ型の屋外広告が40箇所以上の出稿が予定されていたので、街を賑やかに演出したり、期待感を高める狙いもあり、ビルや木々などの周囲の環境に映える色合いを選択しました。
冒頭でも触れた通り、今年は2年ぶりにDESIGN TOUCHが開催されます。期間は2021年10月15日(金)から11月3日(水)まで。今年のテーマは「デザインの裏」です。ぜひ実際にデザインに触れて、デザインの裏側まで楽しんでみてはいかがでしょうか。
Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2021
https://www.fashion-press.net/news/75780
Illustrator, Dan Matutina