WORKS バーチャルKeynote Speech in 北京(前編)

2020.12.29


IXDC公式ホームページより引用

IXDC公式ホームページより引用

12月18日に北京で開催されたカンファレンス「IXDC」にて、キーノートスピーチを行いました。本来であれば現地に赴いて登壇する予定でしたが、Withコロナの状況下では叶わず、今回は収録した動画を会場で上映することになりました。

約3,000人ものオーディエンスがいる大きな会場での上映ということで、マイクや照明など撮影には色々と苦労しました。また、今回はグローバルカンファレンスということもあり、全編を英語で行いました。正直、これが一番大変でした。このあたりの苦労話については、また別の機会にシェアしたいです。笑

このカンファレンスは、UX(User Experience)デザインがテーマなので、今回は自身の経験から2つのトピックについて話しました。

ひとつは、昨年、横浜にオープンした資生堂の新しい研究施設のブランディングについてです。UXデザインを考える上では、他者との差別化は大事な要素になってくると思います。ですが、突飛なことをする必要はありません。ブランドのアイデンティティを見つめ直す事が、逆にユニークな体験デザインにつながるという話です。

ふたつ目は、顧客とブランドの新しい関係性のデザインについてです。2020年代、顧客とブランドは新しい関係性を築いていくのではないかと僕は考えています。ブランド体験をつくるテクノロジーの存在はますます重要になり、ブランドはユーザーとの距離感をいかに縮められるかが勝負になってくると思います。


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IXDC公式ホームページより引用

IXDC公式ホームページより引用

近年、マーケットはコモディティ化し、価格は下がり、利益は減少し、商品の個性が失われていっており、現状を打破するビジネスモデルが求められています。しかし一方で、数字での結果も付きまとうので、非常に難しいのもまた現実です。そんな中で、目先だけの利益にとらわれることなく、ブランドを強いものに育てていくために必要な体験デザインについて、僕がデザイナーとして日々考えていることをスピーチできたと思います。

この記事では、前後編に分けてこのカンファレンスで話した内容についてまとめていきます。前編は、昨年オープンした資生堂の新しいグローバルイノベーションセンターS/PARKのブランディングについてです。


S/PARKのロゴ。アイデアがスパークするというコンセプトを反映し、中心から広がっていくようなイメージと、SHISEIDOのSをイメージしています。

S/PARKのロゴ。アイデアがスパークするというコンセプトを反映し、中心から広がっていくようなイメージと、SHISEIDOのSをイメージしています。

S/PARKのロゴデザインは、資生堂の頭文字のSから由来しています。これには、S/PARKに所属する研究員のアイデアがスパークする場所という意味が込められています。

僕は、このアイデンティティをデザインしていく際に、資生堂が100年以上前から使っている独自のフォントに着目しました。このフォントには資生堂の美のエッセンスが詰まっていると言われていて、資生堂宣伝部に入ると、デザイナーは全員必ずこの書体を手書きで半年間から1年間練習して、資生堂の美を体得していくという習慣が今も続いています。

この書体の中で、特に“美”という漢字に注目しました。なぜならば美は資生堂が永遠に追求するべきテーマだからです。この漢字のパーツの一部を取り出して、ロゴやフォントに仕上げていきました。


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この研究施設はただのオフィスではなく、カフェやミュージアム、資生堂で唯一のカスタマイズ化粧品が作れるビューティバーなど、一般のお客さんが利用できるパブリックなエリアもあります。カフェではリラックスしたり、充実した時間を過ごせるように細かなところまでデザインをほどこしています。

たとえば、2杯コーヒーを買うと下の画像にあるようなカップフォルダがついてきます。すると、友達と一緒に買ってどこかへ持ち運んでみたくなったり、誰かのために一杯コーヒーを買ってあげたりしたくなりますよね。こういった動機づけも、広義の意味での体験デザインだと言えるでしょう。


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ビューティバーでは、自分のためにカスタマイズされた化粧品を購入することができます。そこでは研究員自らがお客さんを問診して、肌の状態を調べ、その場で調合してくれます。

その研究員のユニフォームや化粧品のパッケージはもちろん、一連の肌を計測する行動の中で使われるデバイスのUIのアイコンデザインまでも徹底してデザインしています。細かな点ですが、こういうデザインの積み重ねがお客さんをリッチな気持ちにさせ、満足度を高めるものだと考えています。


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1.ブランドのアイデンティティを見つめ直す事がユニークな体験デザインにつながる

他者と差別化しようとしたときに、突飛なことをする必要はありません。他者との違いをつくるためには自分自身を見つめ直して、アイデンティティがどこにあるのかを本質的に探っていくことが大事です。他人になろうとするのではなく、自分自身を見つめるということが不可欠なのです。

2. 体験デザインはグラフィックデザインのクオリティが大事


私はUXをデザインする上で、最後のユーザーインターフェースになるグラフィックデザインがとても重要だと考えています。どんなに素晴らしいコンセプトやアイデアでもアウトプットのクオリティが高くなければそれを実感することはできません。どんな仕事でも、最後に定着させるグラフィックデザインのクオリティは常に意識しています。アイデアとアウトプットのバランスが噛み合った時に初めて見た人に伝わる、心が動いて感動するものができると確信しています。

S/PARKのクリエイティブについてまとめたビデオもぜひご覧ください。


後編は、2021年1月5日(NY)/1月6日(日本)にアップ予定です。

Information

MdNデザイナーズファイル2021の装丁デザインをしました。

発売日 :2021-02-24
仕 様 :A4判/272P
ISBN :978-4-295-20099-4
価 格 :本体 3800円(税別)
出版社 :エムディエヌコーポレーション
販 売 :Amazon 楽天ブックス ヨドバシ.com

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