ここ数日、D&ADのNEW Bloodという世界の新しい才能を見つける海外アワードで、学生のポートフォリオ審査を行っていました。イギリス、ロンドンのD&ADと言えば、世界で最も権威があり、授賞が難しいと言われているアワードの一つで、審査員として参加させてもらえることはとても光栄なことでした。
また、今年の初めに中国の学生国際ポスターコンペの審査を行ったり、つい先日も武蔵野美術大学のオンラインの授業でグローバルキャリアについての講義をさせていただく機会があったり、ここ2、3年は展覧会や講演などを通してなど、若手のデザイナーや学生の方々と接する機会がすごく増えてきました。
そこで、今日はデザインの道を志している方、学生の方、特にグローバルなキャリアを目指す方々に向けて、僕なりの考えをシェアしたいと思います。絶対にこれだという解答を持っているわけではないですし、何より僕自身が今も挑戦中で模索中の身ですが、経験上得られたこともあるので、みなさんにとって何かのヒントになれば嬉しいなと思っています。
1.どんどん世界のコンペに挑戦しよう!
D&AD NEW Bloodの審査では学生のポートフォリオを一つずつ審査していくのですが、もちろんレベルが高いですし、考えやアプローチもしっかりしていて、アウトプットであるデザインも美しくまとまったものが多く、世界のレベルの高さを実感しました。しかし一方で、日本も負けていないなと思ったのも事実です。
先日、日本の美大芸大生のポートフォリオを見せてもらう機会があったのですが、正直な感想としては全く負けてない、むしろグラフィックデザインスキルでいうとより高いスキルを持っている人が多かったです。
D&AD NEW Bloodの他の審査員が担当する部分には日本からの応募もあったのかもしれませんが、僕が担当した中には日本やアジアからの応募はありませんでした。
冒頭に触れた、武蔵美での講義でも教養科目で大学一年生と二年生が中心だったにも関わらず、100名近い方が参加してくれました。将来のグローバルなキャリア志向がある人がこんなにもいることに驚きましたが、早い時期から世界に挑んでいくという意味で、少しハードルは高いかもしれませんが、D&ADのNEW BloodやONE SHOWのYOUNG GUNSはいいチャンレンジになると思います。YOUNG GUNSは30歳以下が対象で実際の実務仕事で応募することになります。2020年は日本から二人が受賞されていますね!
世界基準の中で自分がどのレベルにいるか、そして、より強い人と出会うことでモチベーションが上がったり、または落ち込んだり、毎年挑戦すればその差が埋まったことに気づいたり、様々な出会いと気づきと驚きがあると思います。挑戦は、成長を強く促します。D&ADは若手教育にも力を入れている非営利団体で、応募フィーも数十£(ポンド)程度です。世界へのチャレンジが格安できる時代です。
また広告・グラフィックデザインの領域では、海外と日本では評価指標が大きく異なります。日本で評価されても海外では評価されにくい人、その逆で海外で評価されても日本で評価されにくい人、いろんな人がいます。今後クライアントがグローバルになることも目標にしている人はぜひ、チャレンジをしてみてはいかがでしょうか。
2.ポートフォリオはWEBサイトがオススメ。
D&ADの審査の際に、PDFで提出する人、WEBサイトを作り込んでいる人、Tumblr、Behance、インスタグラムなど、いろんなプレゼンテーションで作品を提出している学生さんたちを見ました。でもよく考えてみてください。審査となれば審査員はモバイルではなくパソコンで見ることが想像されると思います。その時にインスタグラムはモバイルファーストなのでPC画面では画像(自分のデザイン)が小さく表示され魅力が半減してしまうのは容易に想像できると思います。また、PDFはページごとに見るしかできないですし、ファイルがいくつもに分かれたり、容量が大きすぎたり、グレーの背景や望まないPDFのUIフレームに包まれてしまうのでそれが自分のデザインの一つに見えてしまいかねません。
現時点では、コンペにしても、就職試験にしても、競合プレにしても、ポートフォリオを提出する機会がある時は、僕はWEBサイトで勝負するべきだと考えています。BehanceはAdobeのアカウントがある人なら簡単にページが持てて、それからそのままウェブサイトも作れますし海外の優れたデザインも見れるのでオススメです。そうでなくても、無料で作れるWEBサイトサービスはたくさんあると思うのでぜひ探してみてください。ちなみに僕の個人のサイトとこのブログはSquarespaceで自分で制作しています。コーディングの知識はほとんどなくてもここまでできるので、皆さんも簡単にできるのではないかと思います。ずっと触ってると感覚をつかめてきます。
皆さんが審査員またはクライアントだと思って下記の僕のサイトを見てください。内容はほぼ同じですがどれが一番印象がいいでしょうか。答えは言うまでもありません。コンペに限らず、日本海外問わず、デザイナーであれば作品を提出する機会は多いと思います。フィジカルにファイルに綴じて見せるプレゼンテーションは確実に減少しています。デジタルにいかに美しく強く印象を残すにはどうしたらいいのか、をしっかりと考える必要があります。
WEBサイト https://www.masakihanahara.com/
Behance https://www.behance.net/hanahara
Instagram https://www.instagram.com/masaki_hanahara/
インスタグラムは特定の誰かに見てもらうポートフォリオというよりは、多数の人に広く知ってもらうためにはすごく意義があるツールなので、それぞれに使い分けることが理想的だと思います。僕もそこは学習中です。
3.プレゼンは実際の状況を想像しながら準備する。
僕はプレゼンがとても苦手でした。学生の頃は緊張して何を話しているか分からなくなってしまうほどでした。だからすごく練習してきたのですが、その中で考えたことで日本でも海外でも共通することがあります。それは、いつの時も相手がどんな環境で、どのような状況で見聞きするのか、ということを想像しながら準備することが大事だということです。それが学校の課題であっても就職活動でも、仕事でも、その如何に関わらずです。
例えば僕は大事なプレゼンがある時に、社内で本番の会議室に事前に入れる場合は必ず本番のモニターで作品の色味のチェック、音量の確認、音声のバランス、リモコンはどこにあるか、誰に向かってどのように話すか、など全てリハーサルするようにしています。リモートのプレゼンなら、ZOOMやSkypeのアプリによって画面をシェアする時の仕方、見え方が異なりますよね。相手にどんな画面に見えるかをできるだけリアルに検証した上でスライドを作り練習する必要があると思います。
できる限り本番の状況を想像して練習したり準備したりするときっといい結果が得られることが多いと思います。映像が再生されないとか、リンクが開けないとか、デザインに関わらないところでつまずかないように、スマートに振る舞える準備が必要だと僕は考えています。どうにかなるや、というぶっつけ本番はおすすめしません。
以上、当然と思うことも多々あったかもしれませんが、意外とこの当然と思えることを実直にやることが実は難しいことだと思います。時間もないし、まあどうにかなるだろうと運任せにしてしまいたいところを、ひたすら現実と向き合ってしっかりと準備ができたのなら、いい結果が得られる可能性が高まると思います。
また、若い時から海外にチャンレンジしていくことは自分の可能性を広げる上ではポジティブなことばかりだと思います。結果海外とは関係のない仕事をすることに決めたとしても、視野が広がり得られることは多いからです。
人は失敗したことに後悔するのではなく、挑戦しなかったことに後悔する。と言いますよね。僕は自分にそう言い聞かせながら、日々前を向いて挑戦を続けるようにしています。