今回ご紹介したいのはトライベッカにあるFrenchetteというフレンチレストランが経営してい「Frenchette Bakery」というベーカリーです。このお店ができる前は「Arcade Bakery」という店名で、その名の通り、アーケードの中にあるベーカリーで連日大人気だったのですが、店主の方の体調不良により惜しまれながら閉店。
僕も「Arcade Bakery」のファンだったので閉店の知らせを聞いた時は悲しかったです。そして、閉店してからしばらく経った頃、たまたまビルの中に入ったときに、どこからともなくパンが焼けるいい匂いが!でも、お店が開いている様子もなく、疑問に思っていたのですが、どうやら「Arcade Bakery」のレガシーを受け継ぐべく、近所のフレンチレストランの「Frenchette」が場所を引き継いでベーカリーを開くことになったとのこと。あの匂いはおそらく開店に向けた準備中のものだったのだろうと思います。こうして、パンデミックの最中、昨年の秋に「Frenchette Bakery」がオープンしました。
レストランの方の名前は1978年のDavid Johansenの曲「Frenchette」から名付けたそうです。この曲は「難しいことは考えずただ楽しく踊りましょう!」と歌っているそうで、その名前の通り、このレストランはフレンチの伝統的な料理の形式にこだわることではなく自由な発想で「ピュアに料理を楽しみましょう!」というブランドアイデンティティを持っているとのこと。
そのアイデンティティがしっかりとロゴマークにも反映されています。リズミカルで軽やかなスクリプトのタイポグラフィで表現されています。色調はパリのLaduree(ラデュレ)を思わせるパステルグリーンを基調にしており、焼けたパンの薄い焦げ茶色にとても映えています。気取り過ぎずでも品を感じさせる配色だと思います。
「ette」 はフランス語で名詞にプラスで意味を添える接尾辞で「小さい、かわいい、愛着」などの意味があるそうです。店名をそのまま使うのではなく、あえて「ette」だけでプリントやグッズデザインを作っているのも、シャレていますよね。自由な発想でブランドアイデンティティを尊重しているからなのでしょうか。
店先の看板はもちろん、カップ・紙袋・パンを包む紙・エスプレッソマシーンなどに加え店員さんが身につけるものまで細かくデザインされていて、世界観が確立されますよね。
どういった思いからお店が生まれて、どんな風に育って欲しくて、どんな未来に向かっていくか、過去・現在・未来のストーリーが見えているとブランドアイデンティティを確立しやすく、お客さんにとっても魅力的に見えるのだと思います。僕自身もこのようなお店のブランディングデザインに携わる時は、ブランドストーリーを大切にしたいと考えています。