Branding
資生堂のブランディング事例 Vol.1
2021.3.30
2020.12.29
約3,000人ものオーディエンスがいる大きな会場での上映ということで、マイクや照明など撮影には色々と苦労しました。また、今回はグローバルカンファレンスということもあり、全編を英語で行いました。正直、これが一番大変でした。このあたりの苦労話については、また別の機会にシェアしたいです。笑
このカンファレンスは、UX(User Experience)デザインがテーマなので、今回は自身の経験から2つのトピックについて話しました。
ひとつは、昨年、横浜にオープンした資生堂の新しい研究施設のブランディングについてです。UXデザインを考える上では、他者との差別化は大事な要素になってくると思います。ですが、突飛なことをする必要はありません。ブランドのアイデンティティを見つめ直す事が、逆にユニークな体験デザインにつながるという話です。
ふたつ目は、顧客とブランドの新しい関係性のデザインについてです。2020年代、顧客とブランドは新しい関係性を築いていくのではないかと僕は考えています。ブランド体験をつくるテクノロジーの存在はますます重要になり、ブランドはユーザーとの距離感をいかに縮められるかが勝負になってくると思います。
この記事では、前後編に分けてこのカンファレンスで話した内容についてまとめていきます。前編は、昨年オープンした資生堂の新しいグローバルイノベーションセンターS/PARKのブランディングについてです。
僕は、このアイデンティティをデザインしていく際に、資生堂が100年以上前から使っている独自のフォントに着目しました。このフォントには資生堂の美のエッセンスが詰まっていると言われていて、資生堂宣伝部に入ると、デザイナーは全員必ずこの書体を手書きで半年間から1年間練習して、資生堂の美を体得していくという習慣が今も続いています。
この書体の中で、特に“美”という漢字に注目しました。なぜならば美は資生堂が永遠に追求するべきテーマだからです。この漢字のパーツの一部を取り出して、ロゴやフォントに仕上げていきました。
たとえば、2杯コーヒーを買うと下の画像にあるようなカップフォルダがついてきます。すると、友達と一緒に買ってどこかへ持ち運んでみたくなったり、誰かのために一杯コーヒーを買ってあげたりしたくなりますよね。こういった動機づけも、広義の意味での体験デザインだと言えるでしょう。
その研究員のユニフォームや化粧品のパッケージはもちろん、一連の肌を計測する行動の中で使われるデバイスのUIのアイコンデザインまでも徹底してデザインしています。細かな点ですが、こういうデザインの積み重ねがお客さんをリッチな気持ちにさせ、満足度を高めるものだと考えています。
2. 体験デザインはグラフィックデザインのクオリティが大事
私はUXをデザインする上で、最後のユーザーインターフェースになるグラフィックデザインがとても重要だと考えています。どんなに素晴らしいコンセプトやアイデアでもアウトプットのクオリティが高くなければそれを実感することはできません。どんな仕事でも、最後に定着させるグラフィックデザインのクオリティは常に意識しています。アイデアとアウトプットのバランスが噛み合った時に初めて見た人に伝わる、心が動いて感動するものができると確信しています。
Information
MdNデザイナーズファイル2021の装丁デザインをしました。
発売日 :2021-02-24
仕 様 :A4判/272P
ISBN :978-4-295-20099-4
価 格 :本体 3800円(税別)
出版社 :エムディエヌコーポレーション
販 売 :Amazon 楽天ブックス ヨドバシ.com
詳細はMdN BOOKSをご覧ください。